草津市議会議員 宇野ふさ子
宇野ふさ子のブログ ふさ子日記
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議会の記録
市議会報告 平成22年9月議会 意見書 反対討論

草津市では昨年男女共同参画推進条例が施行され実施に向けては、審議会が設立されました。
国の動きでは、4月には「第3次男女共同参画基本計画の策定に向けて(中間整理)」において、「家族に関する法制について、夫婦や家族の在り方の多様化や女子差別撤廃委員会の最終見解も踏まえ、選択的夫婦別氏制度を含む民法改正が必要である」としています。

にもかかわらず、9月議会において次に掲載する意見書が草政会(自民党系)から提案され、採択されました。内閣の改造時に、なぜ今なのか、3月県議会では提案は取り下げていますが、理解ができません。

国連からの勧告を受けている民法であり、しかもこの意見書には草津市男女共同参画推進条例の条項に矛盾する内容が含まれています。自分たちの議会が条例を可決して施行したのに、なぜ提案をされたのかと思います。これは草津市議会の、議員の姿勢と資質が問われる意見書でもあり、反対の立場で討論に登壇しました。インターネット中継をご覧いただけた方や傍聴していただいた方、人権活動団体等、他市からも多くのご要望もありましたので、その内容を掲載いたします。

「選択的夫婦別姓を認める民法の一部改正」
に慎重な対応を求める意見書(案)

 結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の姓を称することを認める選択的夫婦別姓制度を導入する民法の改正が検討されている。しかし、選択的夫婦別姓に関する国民世論は分かれており、国民的合意にはいまだ至っていない。また、三世代同居の減少など家庭をとりまく環境の変化が、家族の絆の希薄化を招く要因にもなっており、これらを憂うる立場から伝統的家族の価値観を尊重する国民感情も根強く存在する。

 選択的夫婦別姓制度が導入された場合、日々名乗る姓により、夫婦や家族より「個」が意識付けられると思われ、夫婦や家族の絆が弱まることが心配される。さらに、夫婦別姓は必然的に親子別姓となることから近年増加し社会問題となっている親子の断絶を加速する心配もある。家庭の重要性が叫ばれる今日、むしろ必要なのは社会と国家の基本単位である家族の一体感の再認識であり、家族の絆を強化する施策ではないか。

 なお、一部の働く女性をはじめ、旧姓使用を求める声があるが、これについては、民法改正は必要なく、各分野の運用面での対応等で現実的方策による解決を図るべきである。

 日本の伝統文化を守り、国の繁栄と平和な生活と共栄を願う立場から、国においては選択的夫婦別姓法案について慎重に対応することを強く要望する。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

平成22年10月5日

滋賀県草津市議会議長  大脇 正美

内閣総理大臣
法務大臣
衆議院議長
参議院議長     あて

提案説明 草政会 中嶋昭雄議員
これより以下が上記意見書に対する宇野ふさ子の反対討論の概要です。
事前に準備したものであり、当日には時間の都合上全部発言できておりません。

慎重にと掲げていますが、内容は夫婦別姓は反対の内容であることがわかります。この意見書の、議決いかんは草津市議会にとって、人権に対する評価が問われる内容です。法的には夫婦別氏であり、日常会話では姓とか、苗字といいます。

「氏名は、…個人からみれば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成するものというべきである」最高裁判所昭和63年2月16日に判示しました。氏は名と結合することによって社会的に自己を認識させるものであり、自己の人格と切り離して考えることができません。氏名には一人ひとりの思い愛着、生き方、その生活史が込められています。これらの思いを大切にする論理が「人格権」であることが明確に示されたのです。

結婚して氏が変わる人は、女性の方が多くなっています。自分の生まれたときからの氏を名のりたいのに、自由に選べない現法で不利益を被る人もいます。
未婚で氏を変えないでいると 結婚しないのかとか、結婚はまだなのか、と傷つけることもあり、離婚して氏を変えると苦痛を感じる人もおられます。自分の氏を名乗りたい選びたい人の要望を抑えてしまうことは人格権にかかわることであり、人権は尊重されなくてはなりません。氏名の一部である氏について、本人の意思に反して法を強要することは人格権の侵害です。
法治国家として、地方自治体の議会も、こうした最高裁判例を尊重する必要があると思います。

 (ここでふふふ・・と笑う議員がおられました。)

1979年国連総会で女性差別撤廃条約が採択されました。
1985年には日本がこの条約を批准してから25年、日本の民法には2003年7月、2009年8月と2度にわたり、日本政府に対して、夫婦の氏の選択など、民法の中に残る差別的な条項を削除し、立法や行政実務を条約に適合させることを求める旨の改善勧告を受けています。
女性差別撤廃条約の実施状況を4年に一度報告することになっていますが、この報告事項の中には、特に選択的夫婦別氏 婚外子の差別規程・女性差別解消のための特別措置などに対する取り組み状況を2011年8月までに書面で報告するように要請されて日本政府は追われています。
国連の委員会から、日本への評価は低く、歓迎する・評価するの言葉は殆ど見られないのに対して、遺憾である、懸念するの表現が非常に多いことからも、女性に対する人権軽視である日本に対して国際的な批判があります。
2010年4月15日「第3次男女共同参画基本計画の策定に向けて(中間整理)」では、「家族に関する法制について、夫婦や家族の在り方の多様化や女子差別撤廃委員会の最終見解も踏まえ、選択的夫婦別氏制度を含む民法改正が必要である」としています。

 (ここで「国連?」と会話する声が・・・聞こえました。)

草津市では1988年人権と平和を守る都市宣言をし一人ひとりの基本的人権を守る・・、2009年男女共同参画推進条例を施行しそのなかにある3条の(5)や(8)では さまざまな家族の多様性や形態を認めるという内容と、国際協調を記してあり、意見書の内容とは矛盾しています。
今年2010年人権擁護に関する基本方針を改訂しました。
男女共同参画推進条例と相反する内容について、市民の意見がいかがか議論も無くて意見書の提案をし、採択することは逆行為であると考えます。
過日の議員クラブ主催の中川幾郎氏の「人権と行政」の講演の中にありました内容では、人権がいかに大事にされるかは、国、自治体、個人の評価のバロメーターであり、資質が問われるとお聞きしました。
日本国憲法24条には家庭生活における両性の平等、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として相互の協力により維持しなければならないとあり、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚し、法律は制定しなくてはならないものとあります。

子どもから、大人までの個の人権が確立された人たちの集合体が、家族でなければ昔の家父長制の意識が根底に続くことが懸念されます、つまり人権を大事にということです。
文化はその時代に生きる人々が生きやすく新しいものを造ることも必要で、変遷するものであります。
夫婦同氏は日本の伝統文化ではありません。明治以前の制度では庶民には氏がありませんでした。
1875年に、政府から国民すべてが氏を名乗るよう指令が出ましたが、夫婦の氏については、1876年婦女は結婚しても婚姻前の氏を用いることを指令されていました。
明治民法(1898年制定)によって、家制度が確立し、氏は家の呼称とされました。妻は婚姻により夫の家に入る結果、夫の家の氏を称するという形で夫婦同氏が実現したにすぎないのです。
戦後 1947年の民法改正に当たり、家制度が廃止され、氏は個人の呼称となり、夫婦同氏・親子同氏の原則が採用されましたが、夫婦の平等原則があるために、夫又は妻の氏から協議によってどちらかの氏を夫婦の氏にするという現行制度にしたのです。
しかし、どちらの氏でもよいという、一見、中立的なルールが、現実には女性に不利に働いています。一方の性に不利に働くルールは中立的ではなく、不都合に感じるルールで、他に差別的でないルールがあるとすれば、ルールを変える必要がありますがそれが、選択的夫婦別氏制度です。
選択的夫婦別氏制度を導入すると、夫婦の絆が弱まる、親子別氏から親子の断絶を加速すると言われますが果たしてどうでしょう。
日本人でも、国際結婚をした場合には、夫婦別氏が原則です。ただし、婚姻の日から6か月以内に限り、届出によって外国人配偶者の称している氏に変更することができます(戸籍法107条2項)。家庭裁判所は、外国人と婚姻した女性の氏について、複合氏(クルム伊達公子さんのように、夫の氏と妻の氏を続ける形態です)への変更を認めています(東京家庭裁判所平成2年6月10日審判)。
同じ日本人の婚姻でありながら、日本人同士の場合には同氏が強制されることについて、合理的な理由づけは難かしいです。別氏の国際結婚の場合、夫婦の絆が弱い、親子の断絶があると言えるのでしょうか。
a. 同氏・別氏(国によっては、複合氏も含めて)の選択を可能にする国 (東欧や北欧の諸国、オランダ、ギリシャ、イギリス、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど)
b. 氏不変の原則の下、夫も妻も不変の国(韓国、中国、カナダ・ケベック州。イタリア、スペイン・中南米スペイン語圏では、〔名+父の氏+母の氏〕など)
c. 夫は不変だが、妻に夫の氏を称したり、自己の氏に夫の氏を付加することを認める国(フランス、ベルギーなど)
d. 夫婦の共通の氏として婚氏を定めるが、定めなかった場合には、それぞれ自己の氏を称する国(ドイツ、オーストリアなど)
など、夫婦同氏を強制する国は例外的です。

夫の氏による夫婦同氏を強制していたタイも、憲法違反との判決を受けて、選択が可能な制度に移行しました。こうして別氏が原則であったり、選択制であったりする国々で、夫婦の絆が弱い、親子の断絶があるといった事実はありません。日本で導入されるのは、選択的な夫婦別氏制度です。夫婦同氏にしたいと思う人の願いは、そのまま尊重されます。夫婦別氏で家族生活を営みたいと思うカップルが誕生することで、どうして夫婦の絆が弱くなり、親子の断絶が加速するのか、推論ではなく、客観的なデータでが示されておらず、大人が不安をあおるだけで、実証的な説明がされておりません。
同じ氏でなければ、家族の絆が保つことが難しいとは、人道的にはいかがなことでしょう。この選択制が整うことで、どちらかを選ぶという選択肢ができることで何の不利益もありません。1人子どおしの結婚では互いの、氏の問題は解決するのではないでしょうか。
個人としての生き方を尊重し、対等な夫婦関係を築く思いを選択的夫婦別氏に託して、待っている方々もいます。
こうした願いに応えることも、国家の政策として必要なことであり、少数派の希望を無視していては、民主主議国家の繁栄はありえません。ライフスタイルの異なる少数派に対して、社会が寛容でないことには不安感がなお根強いことを示唆してます。
他方、夫婦別氏を実践している事実婚カップルの子どもは、父母の氏が異なることを自然に受け入れていることを実感しています。
大人たちの反応は、自分たちと違う小数のライフスタイルに対して非寛容な社会の反映ではないかとおもわれます。
表題は慎重にと掲げながら、氏が同じを良とし、そうでない家族のありようを、つまり氏が違う人を非難する意識が生まれないかと危惧されています。
選択制が導入されることで、草津市の条例にあるように夫婦関係の多様性が認識されることであり、子どもも、親の関係性が多様であることを認識し偏見をなくす心が育ちます。
民法を堅持することは、国連から勧告を受ける女性差別撤廃条約に反するものであり、女性差別を温存する方向へ決議しようとするもので、その上草津市男女共同参画推進条例に矛盾します。今や国際協調の時代に沿った、誰もが生きやすい社会の構築が求められる時です。
これらを鑑みますとこの意見書は採択すべきではないと考え反対いたします。

※二宮周平氏(草津市男女共同参画推進施策審議会委員長)の資料活用については許可を得て作成しました
草津市議会議員 宇野 房子 [住所] 滋賀県草津市矢倉1−2−45
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